好きな香りを自分でつくる、香りのDIYを目指して!
香りのいろはをお伝えしています。
しばらく更新ができず、すみません!
今回は“香料ができるまで”についてお伝えします。

 

香料は大きく分けて、天然香料と合成香料があります。
天然香料と合成香料の違いは以前取り上げました。

 

記事「香水を知る。」

 

「天然香料」は精油やエッセンシャルオイルとも呼ばれ、
天然の植物や動物の分泌物から抽出された香料のこと。
現在は動物性香料はワシントン条約※の関係で本物を入手するのは困難です。
※絶滅のおそれにある野生動植物を保護するための国際条約

 

植物性香料は植物の花・葉・根などからオイルを抽出したもの。
オーガニックやナチュラルという言葉が良く取り上げられるようになり、
精油を店頭で目にする機会も増えましたよね。
植物から精油を抽出するまではざっくりと、
植物を採取 ⇒ 蒸留 ⇒ 精油を抽出
という流れ。

 

蒸留とは、植物から精油だけを取り出す工程のことです。
蒸留方法は多数あり、使用する植物によって方法を変えたり、
蒸留方法によって精油のグレードも変化します。

 

今回は代表的な蒸留方法を3つご紹介します。

 


1.水蒸気蒸留法
水蒸気蒸留法はもっとも良く用いられる蒸留方法で、古くから使われています。
下のような仕組みで精油を抽出します。
▲水蒸気蒸留法の仕組み

 

ボイラーで熱された熱い水蒸気によって、釜の中の原料植物に含まれる精油成分が揮発し、水蒸気と一緒に上昇します。
そして精油成分を含んだ水蒸気を冷却層で冷却し、液体に戻します。
すると精油は水に溶けず、水よりも軽い性質があるため、精油と水の2層に分かれて溜まっていきます。

上層だけを取り出して精油を抽出し、下層に溜まった蒸留水は芳香水(フローラルウォーター)として扱われることもあります。

 


2.圧搾法
圧搾法は柑橘系などに良く用いられます。
果皮などを機械の圧力で絞って採取した液体を、遠心法で分離して精油を抽出します。
水蒸気蒸留よりも一度に多くの精油を採ることができるのがいい点。
また熱を加えずに精油を抽出するので、素材本来の香りを抽出しやすいですが、
絞る際にカスなどの不純物が混入しやすく、水蒸気蒸留に比べると劣化が早い傾向にあり価格は安価です。

 


3.有機溶剤抽出法
有機溶剤抽出法は熱や圧力、水分だと精油成分が壊されてしまうような、デリケートな植物に使われます。
また、この方法で抽出された精油は「アブソリュート」と呼ばれます。
ジャスミンやローズによく用いられる蒸留方法で、
ジャスミン・アブソリュート(Abs.)などと名前がついている精油は、この蒸留方法で抽出されたものです。   ▲ジャスミンの花

 

まず、揮発性のある有機溶剤に植物原料を漬け、香り成分を抽出します。
有機溶剤には、香り成分と一緒に花に含まれるワックス成分(ロウ)も溶け出すため溶剤が固まります。
これを「コンクリート」と呼び、このコンクリートをエタノールに浸して精油部分を分離させた後、
低圧でエタノールを蒸発させて精油だけを残す。これが有機溶剤抽出法です。
ちょっと難しいので、“アブソリュート=有機溶剤抽出法” これだけ覚えておきましょう!

 

上の2つと比べても圧倒的に手間と時間が掛かり、この方法でないと精油が抽出できない植物もあるため、アブソリュートは高価なものが多いです。

 

同じ名前の精油なのに価格が全然違う!
価格の違いは原料の質の違いだけでなく、蒸留方法の違いも関係しています。
精油を選ぶときの参考にしてみてくださいね。

 


文章:遠藤愛実